原題が似ているのを読んだことがあったが、中身は違う。ただ、クリスマスに問題解決で良いクリスマスになりましたとさ、というのは実に多いなと思う。ただ本作はこの邦題の方が、それを勇気を出して乗り越えるヒロインに重なって、ずっと良かった。
「秘密」は、ピレネー山脈の如く立ちはだかっていた。
彼女は怖かった。自分を守ること、秘密を知られて去られることが。
彼はアイスクライミングの前と後とで別人のようだった。
状況はよく理解できた。手際の良い物語。
二人が親しさを増す過程が良かった。
ただ、その状況では、別れた恋人の打算を通じて彼も学んだような過去が記憶に生々しい。
超人的なヒロインのいざというときの抜群の行動力が、この作品のヒロインの、人となりを表す。そこが最も私としては読み所と思った。
辛いことがあった。その立て続けの試練から、ヒロイン、アリーは彼の危機を救ってみせたのだ。
単純にかっこいいと思った。リアリティーはなくとも、彼を感嘆させる行為だと思う。そんな勇敢さがありながらの、自分の秘密を知られることへの恐怖、わかるが、そこは確かに、彼のピンチには称賛に値する行動を取れた彼女のアンバランスさ。
山を、二人にとってのピレネーを、乗り越えた後の様子が描写されない。その終わりかたはいいところ、腹八分目。
私はコミック派で、ハーレクインのレビューにはよく終盤の駆け足が批判されているのを見るが、私は満腹になるまで全部描かれ尽くし、というのは過剰サービスで作品の個性を削ると思っている。沸騰させようとお水を沸かすと、沸点に達するまでなかなかゴボゴボになっていかないように、お話はそろりそろりと始まり初めは動きを感じないストーリーというのは少なくない。クライマックスに向かって怒濤の加速が突然入る形も有り、と思うのに、その終盤の急速さ歓迎していないレビューを割とよく目にする。
また、饒舌でない幕切れを残念がり、その後を知りたいとの声が続編や番外編圧力に。これが作家の性と思う。
彼の描写はスラッと入り筋肉質的に修飾語に甘んじず展開して良い。導入部は彼視点であり、本作は彼の気づきストーリーの流れで進行する。
クリスマス、子供達とのひとときもきれいにエピソードとして入っているが、ゲームの場面は彼が間接的に誘惑しているシーンが含まれているにも関わらず、興奮材料が不足した。
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