「意外な求婚者」互いに相手のもう一人の存在とずっと戦う流れ。
高評価故に買っているが、今回もそこに乗れなかった。作品紹介にも「名作」の文字があったのだが。
ヒロインセアラが、強いのと弱いのと、はっきりさせたがらないところと、決着に自ら動
くところと、人物像の輪郭に不確かさがある。ヒロインは、侯爵と大尉と、決して思わせ振りでないが、それでもヒロインの心に存在する二人が、彼ら二人ともヒロインに気持ちを寄せる状況を「利用」しているかの物語進行も、多少鼻につく。彼も前の女性と煮え切らないことでバランス取ろうとしたと思われるが、気持ちが残る残らないで二人は同じではない。
心情描写に於いて繰り返されるしつこい疑り深い想像力も、相手を信頼するというのからは余りに遠いし、その割にベッドシーンは頁数多く割いて、HQの抱えるTL小説風の煽り立てが小説を陳腐化した、そんな気にさせられる。
クラリサの母親によって微妙な待遇を受けていたり、クラリサの癇癪に根気よく付き合っていたり、読み手に負わされたヒロインへのちょっとした設定上の仕打ちが、彼らの振る舞いによってもたらされる棚ぼたロマンスとか本人納得の状況とかで一部相殺したとしても、モヤモヤ少し。招待状のことも実行可能性にしっくり来ない。
もう一作「ふさわしき妻は」を 期待するばかりだ。
読み終えて。2作目の方が翻訳のリズム感なのか語選択のはまりの良さを感じる。
こちらは、シンジンの失った恋の描写が強い感傷を誘う。ヒロインのクラリサが、社交界の花であって、その存在感を自他共に認めるにも関わらず、肝心の自分が愛する人には振り向いてもらえない苦しさを持て余すさまがよく伝わる。
二人とも正義感が清々しい。歪みのある関係には安住できないストレートさ、持ってる強さの具合など、類似性があって、二人をどう纏めさせるか興味を繋ぎ、最後までダレずに読めた。
冒頭の「苦い皮肉に口元を歪めたとき」は、疑問。
ありがちだが、主人公を窮地に陥らせる展開が安易。性格の裏付けをもってしても、充分な必要性を感じない。シンジンを登場させストーリーに絡ませようとする、作り手のあざとさすら疑う。
「彼女となら一緒に戦える」がいい。
セアラとシンジン母との和解は私は初恋を引き裂いた張本人にまだわだかまる。92%頁で「彼の花嫁探しを手伝ってくれと彼女に言ったとき」も主客疑問の表現。
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