日頃藍川作品を愛読しているやなぎやこ。本作もこれまでの流れで自然にページを繙いた。が、読み始めてすぐに本作が非常に計算されて紡がれていることに気づいた。まず題名の火の花、これは彼岸花を指しているが、冒頭より花の赤が鮮やかに描かれ、読者の心の
視界が紅一色に染まる。と思っていると、ヒロインの父、そして弟子でヒロインと結ばれる男が生業として取り扱う竹が描かれ、一転して清冽な碧緑が作品世界を彩る。ストーリー展開のヒロインの所作に優しい性格が反映され、温かみがあって好ましい。それに加え上述の見事な色どりの対比。一本とられた! 反面、色彩表現の仕掛けに気づかず最後までいってしまう読者もおられるだろう。その意味では、読者を試す、ある意味怖い短編である。
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