本作には「周囲には理解されない異常な愛」と共に生きる人々が描かれています。私たちは「普通」という言葉を使う時、「世間一般大多数の人がそうである」という認識のもと、少数派の「異常な」人を見かけると奇異の目で見たり、矯正しようとしたり、気の毒が
って心配したりする傾向があります。しかし、それは「普通」という概念が「外側にある」と思い込んでいるからなのかもしれません。外側の「法律」や「常識」「大多数が是とする事実」。それに合わないと違和感を感じ、少数派の人々を見てネガティブな感情を抱きやすくなる。「異常な」愛を持つ当の本人も「本当にこれでいいのか」と自信が持てなくなる。けれど、「普通」というのは本来「内側にある」ものではないでしょうか。周囲にとっては異常だけれど、自分にとってはこれが「普通」。その「普通」を大切にしていてもいいんだよと、物語を通して優しく語りかけられたような気がしました。今は少数派で肩身が狭くても、時代が進み、文化が変われば世の中に受け入れられる可能性もある。今までもそうやって少しずつ「常識」や「法律」は変わってきました。これからは多様性の時代になると言われています。ちょっと変わった人がいても「あの人はそうなのね」と思って見守る人が増えている優しい時代がやってくるかもしれない。そんな希望を抱きながら本を閉じました。読みながら、いつの間にかあたたかい涙が溢れている、優しい愛に触れられる物語です。
もっとみる▼