希代の少女漫画家だと思っている。少女漫画と括りにくいクロスオーバーな活躍というのと違う。ジャンルはあくまでも少女漫画なのだ。
私はくらもち先生の漫画は、その表現が、実写で出せないものであり、動き回るアニメとも異なる、漫画しか表現出来ない表
現をされる漫画家として、ずっと素晴らしいお仕事をされてきたと認識してきた。文字に頼り過ぎていない。描かない部分で「効率的に」表現する意図だという。液体の表現、というくだりの、「計算していないように見えるような計算をする」の言葉に唸らされた。また、長いキャリアの中で、担当の編集さんは実に様々な方がいらしたとは思うが、「書体や配置」を先生の意図を汲んで工夫された方の話も良かった。他にも、先生が出稿寸前で修正出来たエピなどの二人三脚ぶり。デザイナーさんのロゴの事、手伝われるスタッフさんのこと、話が具体的に及び、お一人で成っているのではない仕事の感じや、丁寧な感謝が伝わる。タイトルづけへの提案?だとか、興味は尽きない。漫画家の先生方の交流も面白い。「薔薇はシュラバで生まれる」の著者笹生那実先生や三原順先生、亜月裕先生。それに、新人の頃の「小さな炎」に、柴田昌弘先生が体育館の背景を描かれていると。これは早速確かめようと思っている。タイトルへのこだわりも並々ならぬものを感じた。「アンコールが３回」のささやかな訴え、「海の天辺」の裏話など。
ご当人は、映画監督にして、役者、絵も描く欲張りな仕事、と漫画家というものを表現した。此処に取り組み方がよく出てると感じた。(ネームとは粘土であると！)。
常にいいものを出したい、との、根っからの創造者であり、素敵なセンスで細やかな心境を見せてくれて、それでいながらに独り善がりにならない程度に独特。
美内先生に学んだ事が比較的多く言及、また、山岸先生の影響も要所で言及されてる。意外な感じがした。
くらもち先生の作風を方向付けている理詰めでない感覚の表現にある少しでもいいものを産み出したいとするもの凄い工夫の跡、読んでいて、やはりただ長い画業なのではなく、漫画家として実に大きな存在だと感じた。
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