タイトルと表紙の雰囲気からほのぼのした様子が感じられましたが、意外にも多少の血生臭い凄惨な描写がありました。とても独特な作風で、作者さんの心が常にフラットだなぁと思いました。事実を淡々と並べ、述べる事で神の視点から世界を俯瞰的に見ているよう
な文章に感じました。そういう書き方をすることで、悲惨な出来事は諦念を纏ってより重く読者の心にのしかかって来る気がするし、何気ない優しさや心配りは深く浸透するように伝わる気がしました。
サガルの生き方として「自分の存在しない未来。自分が味わうことのない幸福。ただそれを願って命を燃やす生き方を…。それは人生を賭けるに値することなのだ。」というのがあって、これを読んだ時、「正しくサグラダファミリア建築に関わった大工のよう」だと思いました。建築当初に関わった者は、誰一人として完成を見ることはないと知りながら、未来の為に作り続けるという信念の成せる業で、サガルの生き方とピタリと重なりました。
遠い国の姫がサガルにかけた最後の言葉は、命令のようでいて真実は祈りとも言える切実な願いだったのではないでしょうか。少しミステリー要素があったり、サガルとローランそれぞれの秘密があったりで、とても読み応えがありました。ただBLとしてはL描写がほとんどない(合体はしない)ので、ストーリー性重視の方向けかと思います。
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