私達は桃の木を身近に見ることはありません。庭木に植えられているのを見ることはほぼないと言っていいでしょう。現代では、果樹園に植えられているか、花木として栽培されているのが主でしょう。ですから、梅や桜のように思い描くことは無理かもしれません。
此の小説の舞台は平安時代です。家屋敷や町並みや人々の暮らしについては想像もつかないので、書かれていることから自分なりに情景を思い巡らすしかありません。
主人公の真珠は右大臣の孫娘なので、裕福で屋敷には大勢の傍仕えの者がいます。真珠は母親と叔父等身近な人々が傑物だったので、其の影響もありましたが、元々好奇心が旺盛で胆力のある娘だったのでしょう。其のお蔭で、将来の夫となる瑠璃丸に出会い縁を結ぶことができました。
物の怪や鬼などというものを今の世では感じることができないほど雑多で目まぐるしく、真の闇の暗さや恐怖についても無縁な私達です。
「鬼よりも怖いのは人間」という言葉が本文中に出てきますが、日々の出来事を耳にするにつけ、現代でも其れは変わっていないと言えるでしょう。
そして、物語の中にも悪人は出てきますが、勧善懲悪な場面もあり、愉しんで読み進めることができます。
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