映画研究/写真論における必読文献、本邦初訳
『映画の理論』はクラカウアーの主著であり、映画研究において揺るぎない地位を占めている「古典」かつ金字塔である。「物理的現実を記録し、開示する」映画媒体を一貫性と包括性をもって探究し、その核心へと漸近していく。
Siegfried Kracauer, Theory of Film: The Redemption of Physical Reality, Oxford University Press, 1960 の全訳。
【「序言」より】
映画を突き動かしているのは、束の間の物質的な生を、もっともはかない生を映し出したいという欲望だと考えられる。 映画にとって、街路の群衆、無意識におこなった仕草、その他さまざまな束の間の印象こそが欠かせない内容なのだ。リュミエールの映画作品の数々――歴史上最初の映画――が同時代人たちによって称賛されたのは、それらが 「風に吹かれてさざ波のように揺れる葉」を見せてくれるからだったのは意味深長である。それゆえ、映画作品は、われわれの眼のまえに広がっている世界に浸透すればするほど、この媒体に忠実となるように思われる。
《主要目次》
イントロダクション
第1章 写真
I 一般的特徴
第2章 基本概念
第3章 物理的存在の確立
第4章 内在的な親和性
II 諸領域と構成要素
第5章 歴史とファンタジー
第6章 俳優についての見解
第7章 台詞とサウンド
第8章 音楽
第9章 観客
III 構成
第10章 実験映画
第11章 記録映画
第12章 演劇的なストーリー
第13章 幕間:映画と小説
第14章 〈見出されたストーリー〉とエピソード
第15章 内容の問題
エピローグ
第16章 現代における映画
【訳者解説】偶然と事物の美学:ジークフリート・クラカウアー『映画の理論』について(竹峰義和)