学生時代に一度だけ読み、ずっと心の隅に引っ掛かっていた作品です。全く偶然にも若い友人から薦められ35年ぶりに一気に再読しましたが、深い読後感の中で、ずっと心に残っていた理由に気付かされハッとしました。
登場人物たちは皆、多くの暗いエピソー
ドで描かれます。
天邪鬼、高慢、臆病、酒癖、敗北…それぞれの登場人物たちは懊悩し、挫折し、老いてゆき、諦めかけ、憎悪し、精神を病み、敗北に死を決意し、戦いの中で世を去る者さえ描かれています。そんな場面の連続なのですが、結末では清々しさと共に一種の「神々しさ」さえ感じさせてくれる作品に仕上がっています。
物語は凡百の麻雀漫画にとどまってはいません。「人間を信じる文学の志」のような香りさえします。読者に麻雀の知識があればさらに楽しめますが、麻雀を知らない、特に感受性の豊かな、若い人々にこの作品を薦めます。
もちろん、楽しめない、つまらないと投げ出してしまう人もいるでしょう。
でも、人生に無駄な時間など無いと思うのです。
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