短編の名手、というのは、他のコミックスで判っていたけれど、類似作品は読んだことがない。少年少女がその時期特有の剣で自らも傷つき血を流しながら、という扱ってる題材からして、甘さがない。甘酸っぱいのではなく、レモンビター。またその展開も作り手の
意思を貫き、読み手の意表を突く。
物凄く異質な訳ではない。かといって、どこにでもある出来事はない。
ひとつステージの違うところで展開する。当事者たちが逃げ隠れもできないところに追い詰められ、心理をむき出しにされ、まだ若木が経験値の衣を纏う前にヒリヒリするような目に遭うのだ。しかし、そこまで厳しい尽くし、というのではない。
なんでもふわふわキラキラしてるわけではないという、多分掲載誌に掲載当時で読んでいたら、一冊に含まれる多様な作品の組み合わせのなかで、至極忘れられない作品に、どれもがなったことだろう。現実に向き合わなければならない、彼ら彼女等の現実を、読みながら味わうのだ。どのコミックスも作風に望月ワールドが炸裂し、含みの多い仕上がり。
タイトルは中身を映しているのに、タイトルが少女読者を誘いかけるように見える。
今はひとつの傾向に雪崩打っている作品ばかりもてはやされている気がする。
ある登場人物が気に食わないというだけで、ただそれだけで低評価がついている作品が結構ある。
また、中身が表層的でも目先の綺麗さで騙されたり、高レビューがサクラみたいので実力不相応に並んでいたり、プロとしてアマ超越の仕事をしているのに、強い否定的言葉を投げられたりしている。
素晴らしい仕事をしてる先生達が産み出した子どものような存在であり、出版社と数々折り合いを付けながらも精魂を注ぎ込んだものは、もっと敬愛されていいと私は思っている。漫画制作は自分には不可能な高度な技術。勿論、下らないもの、ただただお金と時間の無駄に感じるものも世の中にはある。しかし、一種のエンタメである漫画、読者の感情に何かしら影響する作品というのは、本当に素晴らしい。喫茶店で人の悪口なんか言い立てている暇が有ったら(よく見る)、作品に触れる機会のひとつもあれば、言い立てられた人の心情も見えるのでは?と思う。
「悪人」の位置付けされてはいない人物の、邪な行為の一瞬を見せる、望月先生作品は巧みな人間物語。単純な善悪対立の図に置かない構造の中で、人間の不安定さ繊細さが浮き彫りになる。
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