恐怖と絶望の少女時代の記憶が凄惨すぎてヒロインは暗闇に生きていた。自分を守る為に、ひたすら自分で自分を守れる範囲に、自分を留めて。
家族運男性運(?)此迄無かったが、逆転でやっと撥ね飛ばせて、ほんとに良かったなと思う。
現代のGyaku
待事件(禁止語なので)の報道が後を絶たないが、死ぬとか、大事件でないと世の中は関心を持たない。
しかし、そのレベル未満の果てしなく犯罪スレスレ、というのは世に少なくないわけで、ヒロインは男性不信どころか人を嫌悪しても不思議ではないだろう。私には想像でしかないが、この種の事を読んだことは何度もある。
悲惨さが文字になるだけよりも、その先に光を見つけるところまでが大切にされるHQは、ひどい目に遭っても後でちゃんといいことがあるんじゃない?と言ってるみたいで、温かい。
お話の世界だからヒロインには彼が神か仏=オアシス。たかられても気前の良い彼は正に仏。よく耐えて生きたよね、という少女時代を過ごし、やっと元凶が居なくなってくれたのに、いつまでも幻影に怯え続けて、尾が長引いた。
真の脱却、ある意味本物のシンデレラストーリー、という感じがする。
話は、記憶喪失と、地獄のような過去、という要素以外、彼との日々は穏やかで柔らかくて、波乱を好む人には物足りないかも。
しかし此迄大変だった人に、まだ試練を与えるなんて必要はないと私は思っている。地獄が数日間であっても長いのに10年もだなんて設定。彼女を彼が癒し切るには長い時間と根気が要る。
急がず静かにヒロインの気持ちを待った彼に、私は男らしさを感じた。
小林先生の描かれる男性は、そんな彼のキャラを映していて、ヒロインの未来が彼の慈愛満ち溢れることを想像させる。人物以外の絵がしっかりと描ける漫画家だから適任。
こうした流れを作り出すために設定された元婚約者の役回りが、しょうもない小さな男で、そこがちょっとあざとかったな、作り話臭さを余計増したのでは?、と思う。考えようによっちゃ、不誠実であるが手放せなくて未練を見せる親友兄も、ある意味ヒロインのことをいいと思う人物であったわけで、自己評価を低からしめたヤツより何倍も人間はマシで、これでも。
その一方で、過去のドラマだけでは話が弾まない。
「いったい誰がきみをこんなに傷つけたんだ!?そいつを僕は絶対許せない」、あぁ、世の中こういう人間ばかりならどれだけいいか。
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