本作で面白いのは、前半部分の、黒髪の英司とメガネの浩一の20年愛を成就させたきっかけを作ったのが、人生の折り返し地点で世間体から解放されて自由に生きるべき、と達観した彼らの妻で、肝心の英司と浩一はサバサバした妻たちと対照的に、過去の自分が犯
した過ちに囚われ、いい大人になってもモダモダしている、という構図だ。
ようやく素直にくっつくのか?と思いきや、スンナリとはいかず、現代と過去の回想をいきつ戻りつする構成が、また社会のしがらみに足をすくわれそうになってしまう40歳の2人の逡巡する姿に共感させ、じれったいながらも、はよ素直になりーや、と応援したくなってしまう。
後半、社会規範から自由になった浩一が、元妻の赤ん坊が自分の子となることを素直に受け入れているのも心の柔らかさを表していて、読み手の心も柔らかくなる。
赤面する中年イケおじのラブコメなので、キュンとしつつも後半になるほど笑い成分多め(代理ちくわ、代理なす、年齢問題…笑)で、話ごとに異なる味わいがあるのが飽きさせない作りとなっている。
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