中学受験をめぐるあらゆる出来事が描かれていてしかも変な誇張がなくて、臨場感がドキュメンタリーを見ているみたいに迫ってくる。どれだけ高瀬先生は膨大な資料を読み込み取材したのか舌を巻くが、受験関係を題材にした書籍の漫画部分を別途担当したことをき
っかけに、今作を着想し、誕生したと何処かで読んだ。これほどの事情通、小出しに表れてくるスターフィッシュのこと、感情を外に出さず冷酷にすら思える黒木先生が中身は情熱充満という話の作り、そして親たちや子供たちの心情のリアル、塾という存在の大きさを示して圧倒される。どこをとっても受験というのは努力の汗と血を流す成果として手にする人生のビッグイベントであるということが伝わる。どの受験生も塾講師と人生の大事な大事な3年ほどを分かち合っている。
初めは主人公である新米の塾講師が外部目線の杓子定規的感情論で入ってくるため、どうしたって黒木先生サイドから見れば軽率さが抜けず、愚問の連発もあり読み手としては苛々も募る。しかしこれは高瀬先生が彼女にその役目を担わせて黒木先生を描く、という手法と思われ、少しずつ業界知識と子ども達への理解を深めて繊細な対応をするようになる、という一種「成長」物語部分もある。佐倉先生と黒木先生はあくまで職場の(上下関係)人間同士であるに過ぎない中でわずかに変化はするが、この作品は黒木は殆ど隙の無いプロフェッショナル。子どもたちの可能性や力を引き出すプロだ。また、親への対応も実に戦略的。それでいて子どもの奥深い問題への視点もきっちり。中学受験のノウハウ満載だが特に13巻はお役立ち度最強。しかし物語の魅力は9,12巻に(現在最新16巻迄既読)。
10年以上前にこどもの中学受験を終えているし、軽く40数年前に私自身経験済み、それでも毎年2月1日前後が近づくと小学生の受験生が気になってしまう。受験にまさかは付き物、その通り。それでも努力は全然無駄じゃない。そんな時間と労力を注いだものへの熱い応援歌に思える。「変わらないものを受け入れる。受け入れるために変わる」の言葉はツーンと苦みが走った。
途中「ガラかめ」が入っているし、有名な進学塾固有名詞の変形で四谷が渋谷に、渋谷が新宿になどもモデルを想像できる校名変換で名付けられて、読みながら各学校の地図が思い浮かびくすり(笑)。2月はまだ続く。2月巻までを一気読みしたかったが待てなかった。
もっとみる▼