女としてではなく、良き同僚もしくは気の置けない友達として6年。
意識されずにいることがいたたまれず、心機一転して新たなスタートを切ろうと決意。
珍しくもない設定で進行するが、友達同士前提ながらキス多過ぎで、そのくせ心の変化は読めない。
娘をここまで愛情を持って接することの出来る二人を見せつけていながら、いい時間を過ごしている光景の最中に肝心な彼の心の描写は見せない。たった一回の欲望を見せてくれた時以外は。その行動に彼の愛情はないと彼女は思っていても、友情から来るものとはキスの性質は当事者自身が判るだろう。「そのキスはなに?」と、問いただしてもいいのではないだろうか?
女性として見られてないという点、50:50でヒロインの職場での有りようも関連するので、あながちヒロインの被害者気分には寄り添いにくい。彼も、自宅ではヒロインの知らなかった顔やカジュアルなスタイルなど、仕事の時に見せない面を見せるのだから。
とはいえ、職場で彼を女としてアピールしてこなかったのは、仕事に対する姿勢としてとても尊敬できる。仕事しに行っているのは紛れもないことだから。
引っ掛かるのは、ただ、想いを気取らせず6年も過ごせたのは、立派なことな訳でもない。むしろ、辞める前にしておいた方がいいことは、物語のその切っ掛けがないと出来なかったのなら、彼を一方的に責めることは出来ない様に思う。
彼は、しかし、ヒロインに彼がいると知らされながらもわきまえることなく、堂々と横取り的に振る舞う。それは、読み手が真実を知っているということを利用していることであって、彼ら当人同士の空間だけの舞台を考えると、彼の行為は誉められない。
ヒロインはずるっと6年無作為に過ごしたことを自ら取り返しに行くか、ひっそり諦めて退場するかだったと思う。そこに、家政婦さんの事故という不幸を足掛かりに、彼らのピンチを、計画してはいなくても結果としてチャンスに変えた。
なんとなく、自分のキャリアをキッチリ築き上げた能力の高い女性がそういう姿勢なのかと、多少失望もある。
また実家の家族も、味方でいるのは解るとしても、受け止め方には一抹の荒さを覚えてしまう。
但バレンタインのモチーフを劇的に持ってきて、そこは盛り上がった。
悪者にさせない作劇上の配慮からかヒロインは正直になってしまったが、それは後日の含みにしてよかった気がする。
もっとみる▼