自分自身の幸せを考えたことのなかったプリンセスが、牢獄から抜け出せた。
少し前に読んだ「一夜に賭けた家なき子」(みなみ恵夢/キャロル・マリネッリ)を、思い出した。少しだが根本は似てる。
鬼の兄を許す筋立てはHQっぽいが、許すのが彼の方っ
ていうのがすごいわ。捻りの効いた一貫性というか。
彼が雇った使用人が良すぎて、冷えた宮殿から来た王女様には幸運。運というよりは彼の目が肥えていたと言うべきか。
妊娠初期の妊婦には、精神的にも、体力的にもきついことの連続に、赤ちゃんへの影響が心配だが、何事もなく描かれた。
大公さまの関係描写は後半とうまく連携できない。伏線的に彼が動いている、と匂わされたのみ。
ヒロインの心の中の言葉も建前で埋め尽くされることが多く、そのアイスプリンセスがやっと本音をさらけ出すクライマックスは、分厚い氷の下を覗かせて、彼の問いかけに対して噴き出し始める。その温度の高い感情が、享受出来てなかった「普通の」人間らしい毎日が始まることも予感させて、ほっとする、
星合男子は綺麗だから、ヒロインが舞踏会で口説かれ、密会を囁かれるシーン、首にかけられる息、というのは文字だけでも味わえたが、彼女がその気になるというところを、彼からの一曲の申し込みから、ダンスから、顔を近づけてきて声を潜め、耳元で甘く誘う、ここはもっともっと盛り上げて描いて欲しかった。
男女という組み合わせでは、公然と、または密やかに、そして大胆に、けれど繊細に、二人の間柄が一発妊娠を結果的に最終的に歓迎されるエピソードになったと、二人がのちのち振り返られるような体裁があると良かった。
ファン投票みたいに星合男子に付ける格好で星を入れたが、あと20冊程度でHQは卒業しようか思案中。
HQの中で未踏分野をななるべく読みたいのか、特定の先生を絞るかもまだ迷う。
原作を読まないタイプの私だが、今回、日頃参考にして来なかった原作書籍レビューを読んだら、賛辞に心引かれるものがあり、読むのを決意した。
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