ホラーにありがちな、もっともらしい因縁や除霊だ供養だといった説教臭さがない。
唐突に出会いあるいは巻き込まれる理不尽な現象はほとんどの場合そのまま解決しないし作者も解説しない。その作風自体が[不安]だ。
恐怖は克服できても不安は完全には拭え
ない。似たような街の角でふと憶い出すようになると[種]は発芽し、成長を始めたのかもしれない。
ホラーはまた作画力に負うところが大きい。
描写によっては逆に笑いに転じてしまうこともあるが、この作者ならその点の[不安]はない。控え目に抑えていながら、不気味なもの、暴力的なもの、不可解なものを的確に表現している。
個人的には一話目のように異様な侵入者をただ視ているだけな話が好み。[スイム]や[メッセージ]は不安とは正反対なハートウォーミングな話。
一回分に短い話がいくつか含まれているので厭きないし、どの回からでも読める。
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