勇ましくてエネルギッシュなお姫様。そのヒロインは、決して好戦的だったからなのではなく、争いの多い時代、人が戦ったりして自分の出来る働きを各人が持ち場でするのを、ただ黙って眺めるだけでは収まらない性分からだった。
だから、積極性は武芸に
対してだけ発揮されるのでなく、城の中の使用人たちや領地の農民たちの中でも同じ。そして愛する人には自らの口で想いを伝え、ダメもとで彼にぶつかっていく。そのまっすぐさは小気味良い。修道院入りの前からの描写を挿入して、ヒロインの今も昔も変わらぬキャラを示す。
ヒロインが山賊の襲撃を受けて警護者二人を襲われて死なれてしまった心の痛みと、自らも瀕死の重傷を負った大変な体験とで、なかなか立ち直ることができない時期もずっと寄り添ってくれた存在の彼。
彼は領民自らを武装させず、荒らされる領地を一人で守ることを通じて過去への後悔の念を無法者への怒りに変えてぶつけている。彼は自分が彼女にふさわしくないと思っている。
彼がヒロインを拒絶しても、ヒロインは剣術の稽古のようにまた立ち向かっていく。気持ちいいくらいの直球。
ショートカットが可愛らしい。一般的な子女は髪を切ることがない時代。修道女経験あればこそだが、命拾いと貞操と快活さと、彼女のキャラがそのヘアスタイルに凝縮されている。
生き残った者、生かされた者の努めを、一見重苦しくし過ぎずに語っているストーリーだが、争いや人心の荒廃にあってなお折れず、失わないみずみずしいたくましさ、困難にも曲がってしまわない真っ直ぐさが、明日への希望を持たせてくれる。
治安が悪化の一途であるときにも、おじけず戦う心意気には、ヒロインのなかにヒーローをも見た気分もしてくる。
もちろん、彼が、「愛してる」との台詞を言うコマは、ずっと口にせず、手も出さず、ヒロインのために本心を隠すつもりでいた、その末の、彼の心の奥からの死を覚悟したゆえの真実の声、インパクトの大きい、そして、ストーリー中、最重要シーン。
死ぬかもしれないというときまで、決して彼の方から表されることのなかったであろうこのシーンの重みが、幾多のHQの中でもこのストーリーに、告白という行動の持っている高いドラマ性を感じさせて良い。
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