死後に出会ったのならまた違うものと思うが、仲間の死の前にお互いの気持ちに勘づいていた関係は、きっと、タイミングが残酷すぎて、死んだ仲間にこれ以上哀しみを背負わせたくなくて、よりずっと強力な鍵を二人の関係にかけて閉じ込めてしまったことだろう。
彼らを解き放してくれなかった死者の魂は、一体その呪縛から逃れられないでいる二人を、二人が幸せになることを本当に望まなかったかどうかは、誰も分からない。
ともあれ二人だけではなく、かけがえのない仲間を失った皆がみな、深い傷を負った悲しい事件のその後遺症から、やっと立ち直るシリーズらしい。
この二人の、本当はこちらの方に気持ちが傾いていたという現実直視から入っていくストーリー。
自分達だけ幸せになっていいのか、誰しもきっとその立場なら自問するであろう堂々巡りの悩みを、この二人が次の一歩を踏み出して、少年たちの苦い夏、ずっとずっと苦しみ続けて終わらなかった夏が終わる。
こういう心境を脱する方法が、実際どういうものなのかは私には分からないが、脱出者を描いて見せてくれたことに、ひとつの意味を感じる。
ただ、その、葛藤と乗り越える様子には、もう少し乗り越える際のビジュアルが欲しかった。難しいとは思うけれども、それがこのストーリーのメインだと思うから。
表紙はやっぱり少々男性の顔立ちが縦に長目であるのが気になってしまう。
星は4.0〜3.9。
追記:星上方調整。ほぼ二年ぶりに読んだ。当時三部構成とは理解の上で最も評判の良い本作だけつまみ食いした。
改めて今回、月の夜の誘惑、恋に落ちたボス、先行作読了後に読み直すと、本作の味わいは深まった。
クーパーのチョコチップクッキー食べない?というシーンや、マギーの自覚したおせっかいなどに、三作の有機的繋がりが鮮やかに広がる。かつての仲間同士の空気が、ヒロインの息子エリックの背後を固めてくれて、単独で読んでも不自然さは一切無かったが、一人一人の言葉やたたずまいに実在感が増した。その頃の回想シーンは紙幅で難しかったろうが、せっかく漫画なのだから、若き日のキラキラは見たかったようなー。
ジェイクが、空を眺めて思いに耽るシーン、ヒロインとの今後の有りようを決定付けるのだから、時間的要素は見せて欲しかった。
本作は少ないが、手書き文字が読み易いのは大歓迎。キスシーンは、ロマンチック気分を高揚させてくれる。
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