科学の女神スキエンティア(scienceの語源scientiaから?)が、人々を見つめている。ただ、見つめている。
未来社会っぽいタワーの威容が各話を見下ろすも、ストーリーの舞台は現代の社会と感覚的に隔たりが無い。むしろ我々の日々の中での
どこかで誰かの送る日々の描写であり、そこに科学の助けを利用するエピソードが来る。大人のドラえもん的な。
味わい深かった。登場人物の立場なら望むかも、或いは、聞きつけたらホイと乗ってしまうかも、という、実行可能性スレスレの絶妙な設定がなされている。だから、身近な感じもするかと思えば、傍らに展開しているこの世界のまさに誰かの現実かもという気もしてしまう。非現実と判っていてもやるせなさや不思議な体験感覚がある。
各話のキャラの絵はみな似てる。感情豊かとはいえず、どちらかと言えば仏頂面に見える。美形は居ない。ところがそれは却ってどれも別人の話とは感じさせず、普遍的な顔と思わせる。そこが、物語のSF設定が突拍子も無いとの冷めた距離感を読み手に持たせないことに繋がってると見える。
とにかく寓話的であり、しかし同時に説教臭さは無く、ストーリーの性質が救済や夢の実現とシビアな交換関係にあることとのバランスが呈示される。その面白いポジショニング、ドラマに含みが与えられる。最近知った藤子F不二雄先生の超短編SFの作品群を思わせる。
シーモア(島)で、3人(内1人は被紹介だから実質2人)のお勧めがあり購入に踏み切ったもの。
私は、特に第三話に滂沱の涙。自分も親だからか辛かった。普通は無い道だが此処にはある。その先を見据える作者の視点は温かかった。
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