山賊の一味のように現れ、通過するところだったその地を治めるデイ・バラ兄弟のうちの一人、サイモンを、その騎士としての面子を危うくするビーシア。
このヒロインは戦闘体制でサイモンを手荒く迎える。出逢ったときは信用のならない相手だったから。
サイモンもやられたままでは腹の虫が収まらない、ただじゃおかない、このまま引き下がれない、という心境、自分の力でねじ伏せることで前半はムキになっている。
初めて見るタイプのヒロインが、サイモンにとっては居城そっちのけでなにくれとなく、日を追って姿を探しに行ってしまう、関わりを断てない存在となっていく。
出逢いは盗賊に縛り上げられ、家来も馬も取り上げられ、サイモンには屈辱の出来事であったが、次第に欲するようになっていく。
初対面は盗賊の彼女は、あるときは悪臭を放つ得体の知れない姿で酒場に現れるなど、サイモンはヒロインには翻弄されるばかりだ。
対立から次第に男女の感情へと無意識に変化していく二人の関係を縦軸に、姫であるヒロインを今の状況に追い込んだ城の乗っ取り状態へのサイモンの理解と協力の有りようが横軸となって、スリリングに物語は進行する。
段々互いに信用し始め、相手の力を認めていく過程が無理がなくて、読み手として、二人がタッグを組んで城奪還&父親救出劇の展開に納得する。
本当は、私はHQには性的描写を入れて欲しくない。それは別ジャンルで読むからいいと思っている。限られた紙幅で、HQ的な世界で楽しむには、それを入れられてしまうと作品の趣旨が変わり、ストーリーの中で読み手として泣き笑いに浸れなくなるからだ。つまり、そっちを煽ってくると、そっちで刺激を強めるだけ、作品の格調は地に落ちてしまう。
けれど、この「騎士と女盗賊」1、2は、比類の無い断然突き抜けた感のあるヒロインを持ってきているぶんそれは仕方がないのかもしれない。
現に、そのシーンで、ストーリーが体を成さなくなる、ということはなかった。
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