作者曰く、元々は読み切りとして描かれた本作。そのためかsecret1.2は女性の遺体をめぐるミステリー風だが、secret3以降は二人の“イチカワミツオ”の歪んだ愛憎劇へとテーマが変容している。3以降はより暴力描写などが過激になるので苦手な
方には向かないかも。個人的には読み飛ばしてでも読んで欲しい魅力があると思うが、生理的に駄目な方は難しいかと。
高校時代に主従関係を結んだ二人の“イチカワミツオ”。小悪党として闇社会に生きる市川光央と再会して、壱河光夫は一般社会から転落していく。そして未来のない闇へと突き進む二人の姿は、道行物(心中物)を連想させる。
壱河光夫にとって市川光央は神々によって切り離された自分の半身であり、この同姓同名の男と一体化(球体化)して、完全無欠な“イチカワミツオ”になりたいと願っている。別の人間を自身と同一視する“究極の自己愛”を描く本作は、狂気や偏執など様々な感情の坩堝を堪能できる作品である。
電子書籍の単話タイトルを見ると、紙本で収録している『雨』という書き下ろしがないようです。(時系列は本編後)本編を気に入った方には(個人的に)ぜひ読んで欲しい短編なので、もし無いならぜひ電子書籍でも収録して欲しい。(もちろん読めなくても本編に支障はありません。)
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