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水と水晶の中間の透明感と、あっけらかんとしたキャラクターが魅力の作者さん。「こちら側」と「あちら側」の境界線のあいまいさ、不思議なものが当たり前の顔して隣にいるような感じ、「なるようになる」軽やかさ、そして何より、物事を捉
える視線にやさしさがあって素敵です。時々無性に読みたくなります。
1993年から約10年間、少年を主人公とした短篇を中心に発表、発表された短篇作品は全てこの文庫版短編集全4巻に収録されています。コメディー部分の物理的勢いあるツッコミのノリは、当時の雰囲気ですね。
文庫版短編集1冊目のこちらは、ファンタジーを集めた約9作品。
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・『藍色の夜』(52p)異国風砂漠。深刻になりがちなテーマを、ワイルドな力技で明るくまとめてあります。生きて行くのはこんな感じで良いんだよ、って気分になれます。星5つ。
・『 sea green 』(36p)海辺の王国。お気楽第七王子と振り回される従者、そして人魚。幸せなメルヘン。星5つ。
・『天色神殿』(24p)山の上の神殿。寂しさを知ることで幸せも知る。星4つ。
・『ラルゴ』(16p)領主の兄弟とその従者。エロは無いけどこれはBL。後日談おまけ漫画(『ラルゴその後』8p)付き。星3つ。
・『こころの実』(14p)年若い領主と魔女の童話。星4つ。
・『ぶどうの瞳』(12p)お屋敷のご主人と下働きの少年の気の長い恋の話。あらヤダかわいい、って感じのBL。ちょいおまけの星4つ。
・『ともだちにあいに』(16p)いつかのどこか、村はずれの山の上に一人で住んでる変わり者と、そこにいつも届け物に行く少年。押し付けじゃない、一緒に居られるのが楽しい、そんな気負わない友情。好き。星5つ。
・『やまつみのころびね』(30p)現代日本の田舎の生贄話。著者のツボらしい土着の神様、ツボだけあって非常に良い描かれ方。星5つ。
・『夏待ち』(50p)初単行本時の表題作。10年ぶりの母親の田舎、なぜか自分を嫌う従兄弟、そして子供の頃遊んだ相手のお狐様。特に誰かが何をして、という話ではないんだけども、なんとなく楽しく良い方に転がっていく感じ。著者コメントに「描いていて異様に楽しかった」とありますが、そういうのが作品の雰囲気に出たんじゃないかと思います。この作品で、作者さんのことが決定的に好きになった思い出。星5つ。
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