違うのに、「雪の女王」が数年前に流行ったとき思い出していた。これもモチーフが雪の女王だったから。
「のだめカンタービレ」を読むたび毎に、これも、両者は作風も主題も異なるために二作品の間にはかなり違いはあるのに、読みたくてたまらなくなってい
た。才能ある指揮者の卵が、偶然練習室の音の中からヒロインの出す音に耳を済ますシーンは、どうしてもダブる。
ストーリーは変わったところはない。
亡くなった恋人の幻影を抱いて生きるヒロイン、ルカが、彼女を愛し始めたカイの頑なな気持ちをほぐす。カイはルカを愛するようになっていたから。
カイを愛し始めそうになってルカは、亡き恋人への気持ちを大切にする余りそんな自分を受け入れられないと心がフリーズしてしまう。それを、焦らず深い愛を込めて溶かしたのは、カイ。
雪の女王は、女王のせいで氷の破片がハートに突き刺さったカイをカイのことを誰よりも大切に思うヒロインが愛で溶かす、逆眠り姫。
本作は、両人が相互に溶かすストーリー。
私がかつて最も素晴らしさを感じた、シューマン「子供の情景」を弾くシーン、これをどうしてもまた読みたいと思った。あの頃は、しばらくの間影響を受けて自分でも弾いていた。
今回読むと、今も作品の空気を十分吸い込んだ場面と思うが、後半に差し掛かるとカイの母親や恩師の立場にも思いを巡らせることができ、このふわーっと靄がかかったような世界になんとかリアリティを持ち込む存在になっている。
大和和紀先生の代表作のひとつ「ハイカラさんが通る」の、パリ番外編を思わせるため、特に目立たないが、私は、同氏の初期作品「ひとりぼっち流花」も読んでいながら、今回収録版にある
あとがきを見るまで意図に気づけなかった。
音楽マンガのなかでは、私が最初に音の存在を、絵と言葉だけが構成要素のマンガのなかに見出だした作品。静けさの中に音を表すのは、オノマトペ的なマンガ固有のお約束ごとのなかに出すより難しいことだったはずだと思っている。
もっとみる▼