(156ページ/500pt)
少し前のレビューに、英語⇔日本語の通訳・翻訳が仕事の一つと書いたら、私がふだん使う辞書に興味があると仰ってくださる方が…!そこで、本書の著者が三代にわたり作り上げた国語辞書をご紹介します。
日本語でもの
を書く仕事をされていたり、外国語⇔日本語の訳出に携わる人であれば「知らない」人はいないと思われる『日本国語大辞典』。映画化もされた三浦しをん著『舟を編む』の冒頭にも登場しています。
国語辞書の代名詞的存在の『広辞苑』は実は “中型辞典” (収録25万語)。対して『日本国語大辞典』は日本唯一の“大型辞典” (全14巻/50万項目/100万用例)。が、お値段もン十万、おいそれと手が出せません。
そこで、ふだんは電子辞書内蔵の『精選版 日本国語大辞典』(精選日国) を使っています。30万項目/30万用例とスケールダウンするものの、本書を読めばわかる通り、編纂の経緯からも定義と用例の正確さは他を圧倒し、訳出者にとっての「お守り」「拠り所」です。
通訳の先輩方はネット辞書の類いは殆ど使いません。その理由は主に2つ。1つは、通訳者が現場でスマホを操作することを機密保持の点からも嫌がるクライアントが多いため。2つめは、ネット上の情報には無責任で誤ったものが本当に多いため。やむを得ずネットで引くという場合は、『デジタル大辞泉』や『大辞林』に加え先の『精選日国』まで無料で使えるコト×ンク一択という人が多いです(直接ブラウザで引かずアプリからオンラインで)。何か言葉を入力すれば複数辞書を横断して一括表示してくれます。
ためしに「まとを」と入れて検索をクリックすれば、リストトップに「的を射る」と表示され、読めば「的を得る」だと誤用している人が多いと分かります。「むねのつかえ」と入れれば「胸の痞えが下りる」。「みっか」と入力し結果リストを全表示させると「三日に上げず」の表記が。よく「三日とあけず通いつめる」等と誤用されているのを(BLノベルでも) 見かける言葉ですよね。「プチフール」や「バウムクーヘン」というお菓子の語源も確認できます。
もともと辞書を読むことが好きでしたし、今は仕事柄、辞書を引かない日はありません。ですが、本書で著者が書いているように、自分では分かっていると「思っている」ふだん使いの言葉こそ辞書を引く必要があるなぁ、とつくづく思い知る毎日です。
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