藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。レビューは氏の作品に限っているが、本作はその藍川女史が解説をくわえていることから、番外編ということで、巨匠の作品を振り返ります。主人公は三十路の人妻。夫との満たされぬ夫婦生活から他の男とのロマンスを繰り広げ・
・・という、とっかかりはありふれたシチュエーションながら、行為の描写は読んでいて、いい意味で呆れるほどじっくりと、深みを持って展開され、さすがとうならせられる。女の性を研究し作品の中で掴み出して読者の前にどんと置く。その求道者ぶりは、あたかも作中で血道を上げて人妻をいたぶる男達と姿が重ね合わされる。やなぎやこ、読んでいて欲情するどころかその創作力と文章のレベルの高さに感心し、鬼才と凡夫との埋めがたい懸絶を感じるのであった。団鬼六作品ではやはり「花と蛇」が筆頭に上がるが、あれだけの長編、心身を削って読んでいくのが少々辛いという方には、本作を入門編としてお薦めする。
もっとみる▼