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3.11東日本大震災の被災体験を振り返りながら、我が国の防災や災害時の避難について疑問を呈した作品となっている。現在のハザードマップは、東日本大震災の教訓が全く生かされていない。知っていれば助かる命4千万人超、このままでは、また多くの犠牲者が・・・
今回は4人の著者がおり、それぞれのエピソードが書かれている。更に、本書を機会に「風化させてはいけない」と東日本大震災のエピソードを募集し、続編を見据えている。
第一章で語られるのは、著者自身が体験した「震災」である。
エピソード1では妻に聞いたという「明暗を分けた帰路」の話が強く印象付けられる。ビルAに避難しなかったことが妻の生死を分け、「最初から津波避難場所に逃げていれば助かった」はずの命。ここから「地震避難場所は津波避難場所と一本化」すべきという、一貫した論と主張が展開される。
エピソード2では、支援物資に離乳食が無く、小さな子供のいる家庭は、緊急時の準備を真剣に考えておく必要が有ると訴える。
エピソード3では、津波に呑まれた車は打ち上げ花火のようだったと、体験者でしか語る事のできない体験が語られている。
エピソード4では、地震の恐ろしさと津波の怖さの臨場感あふれる体験談と、震災後のマニュアルに相当する貴重な対応が語られる。
第二章では「ハザードマップの落とし穴」として、「絶対にやってはいけないこと」を自身が住む沼津市を南海トラフ地震が襲うという想定をもとにして、著者は沼津市や富士市を例にシミュレーションし、市のハザードマップを使って避難路を探る。そこで著者が指摘するのは行政による津波の遡上想定の甘さであり、南海トラフ地震では津波到達時間が東日本大震災の時より遥かに早いので、逃げる時間がほとんど無い、という専門家の意見を挙げる。まさに「避難場所への初動が運命を左右する」のだ。そこから巨大連動地震を想定した「ハザードマップが必須」と結論付ける。
もし今自分が住む地域に大震災が発生したら“自分や大切な人の命“を守る準備はできているだろうか? ハザードマップの確認はできているだろうか? 防災グッズは揃っているだろうか?リアリティに書かれている著者の当時の状況に照らし合わせながら、自分事として想像してほしい。また、防災に関する内容も豊富に書かれているので、是非参考にしたい一冊だ。