少女漫画「のだめカンタービレ」という物語があったが、音楽を奏でる者は、その音によって惹かれ恋し一流の世界へという物語だった。この「潮風のいざない」も、ヒロインミランダのヴァイオリンの音色に惹かれたヒーローセオは、両親と過ごした幸せな時に奏で
たブズーキーの音色という共通項を思い出し心惹かれていた。彼女の紡ぎ出す音の調べは彼の過去の家族への思慕を蘇らせ、温かく、憧れていた家庭を望む気持ちをも蘇らせていたと分かる。そして彼の弾くブズーキーの音色にミランダもまた彼を察しそして惹かれ、ヴァイオリンへの情熱をも取り戻していった。思っていたほどの起伏もお互いへの欲望も無かったのにはガッカリだが、そういう風に導かれている事は理解できた。それでもやはり、セオの置かれている一族の暗い背景にこそ欲しかった強い想いのシチュエーションが、かなり少女趣味な仕上がりで残念で仕方がない。この物語は「薔薇に託した想い」の姉のお話で、それを鑑みると随分と短いヴァイオリニスト生命だったとわかりかなり驚いた。
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