生徒を、しかも男を好きになってしまった──和希が教師を辞め家業を手伝うようになって六年。童顔だが、もうじき三十歳。最近では見合いを勧められることも少なくない。そんなある日、和希に憧れて教師となったかつての教え子であり、当時思いを寄せていた高木と再会する。この日から元教師と教え子は「店と客」の関係になった。大人になった高木と交わす束の間の会話は、和希にとって心地よいものだった。しかし、過去の罪悪感が無意識に高木と向き合うことを避けさせる。だから、高木が和希に抱いている気持ちにもひどく鈍感になっていたのだが……。